数年前、タイのとある場所でダイビングをした。私の他のメンバーはイギリス人、アイルランド人、デンマーク人、アメリカ人、ロシア人であった。ダイビングが終わった後、皆で歓談をしていたとき、プレミアリーグの放送が始まった。
プレミアリーグはタイで大人気であり、街中の子供が大きなモニターのあるレストランに集まって観戦する。プレミアリーグだけでなくタイ人は基本的にイギリス大好きである。私はそれを知っていたので、
「タイ人ってイギリス好きだよなー」とその場で発言した。するとイギリス人のうち一人がこう言った。
「だって俺達はジャパンエンパイアと違って一般人には手を出していないからな」
あれっ?イギリスってそんな教育してんの?と思って愕然とした。あれだけ悪逆非道の限りを尽くした大英帝国が今そんな教育をしているとは・・・。
私は反論したが、その場にいた他国人は私を責めて、イギリスを責めることはなかった。アメリカ人に至っては
「だから俺達がアトミックボムを落としてやったんだ」と言っていた。
その二ヶ月後、私はミャンマーを訪れる機会があった。その時、入国の手続きを手伝ってくれるサービスガイドを探していたら、一人の男に出会った。彼は私が日本人だとわかると、相場の四分の一の値段でいいと言った。
船の上で彼の話を聞いていると、日本軍の話になった。丁度その場所は日本軍がミャンマーに侵入した場所であって、彼は川辺のジャングルを指さし、「あそこから日本軍が来たんだ」と教えてくれた。
そして彼の話はこうである。
「それまで俺達の国にはイギリスが駐留していた。あいつらは最低なヤツらだ。飛行機で来て色んな物を盗んでいった。食料、家畜、女・・・。その次に日本軍がやってきた。彼らは戦いに来ただけだった。勇敢な日本軍はイギリス軍をすごい速さで撃破し、ヤンゴンまで奪い取った。その後イギリスが巻き返しを図り、ミャンマーの北のほうで5万人の日本兵が死んだ。俺達はがっかりした。そうだお前、日本ではサムライソードはいくらするんだ?ミャンマーには沢山あるぞ。安いんだ。サムライソードは勇敢なソルジャーの証として人気なんだ」
5万人死んだというのはインパール作戦のことかなと思いながら聞いていたが、その時ダイビングショップのイギリス人を思い出した。あの野郎、全くのデタラメをこきやがって。と思った。しかし歴史認識というものは、事実がどうであるかよりも後世の人がどうあって欲しいかで決まるものなのである。
なので今現在日本が悪者でいてくれたほうが助かる、という人が多い限り、いくらでも相手側の都合の良いように歴史は書き換えられ続ける。せめて国際社会の場で、相手側の思惑通りにならないように主張を続けるくらいしなければ、どんどん歴史は捻じ曲げられていってしまう。
みんなわかってくれるよ、なんていうお花畑脳は国際社会では通用しないのである。
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