(読売新聞 – 07月09日 01:58)
http://clipmarks.com/clipmark/C2990794-17EE-435B-A5C4-E85EDA7711ED/
私が上海にいた頃からウイグル自治区及びその周辺でのテロは沢山あった。単に報道されていなかっただけで、あらゆる都市でウイグル系の人種は事件を起こしていた。旅行に行った同学からよく聞かされていたものである。
中国は単一民族国歌であると誤解している日本人が私の周りにはまだまだ多かったので、そんなことないよトルコ系ムスリムやチベット系密教徒なんかもいて、中国はちょっとした世界だよ、現にこういう事件が沢山あるんだよ、なんて説明していたものである。
さて今回の暴動で思ったことは、中国のナショナリズムだ。以前のユーゴの中国大使館誤爆の時に起きたアメリカ大使館襲撃から始まって、日本への反対抗議デモ、そして今回のウイグル人労働者排斥運動、中国では漢族としてのナショナリズムが盛んになってきている。
ちょっと前まで、魯迅の書いた阿Q正伝に代表され、孫文がそれを非難していたように、中国人の最大の問題はそのナショナリズムのなさであった。上海租界で外国人に処刑される中国人を中国人が笑いながら見ている、そんな光景を歯痒く思っていたのが辛亥革命を起こした連中である。
ところがせっかく起こした辛亥革命も蒋介石にのっとられ、さらに蒋介石は共産党に敗れ去った。ここで中国のナショナリズムは完全消滅したように見えた。しかし毛沢東は中国人のメンタルの中で師弟関係や同学に仲間意識が生まれるということに注目し、全国のあらゆる先生の先生を自分にしようとした。こうすることによってナショナリズムを確立しようと考えたのである。自分が先生になれない分野は取り壊すことにした。これが文化大革命の正体である。
ここまでしたにも関わらず、中国人にナショナリズムは生まれなかった。ところが一体どうして最近になってこのようなナショナリズムが生まれてきたのか。あれほど過去の偉人達が苦労して取り組んできた中国のナショナリズムが自然発生的に起こっている。今回の暴動もインターネットが発祥だという。
私の考察では、中国人が諸外国を知ることが出来るようになったからである。日本でも田舎しか知らない人間は自分の世界が狭い。だから小さな自分の知ってる場所で精一杯粋がろうとし、自分の見える範囲にいる敵を排除しようとする。しかし、広い世界を知っている人間は敵を世界中に見出し、自分の見える範囲にいる人間を見方につけようとする。これと同じことが中国人にも起きていたのだ。
皮肉にも施政者がナショナリズムのために行っていた情報封鎖が中国人のナショナリズムを封鎖してしまっていたのだ。
ただし、漢族も単一民族ではない。古代の斉晋燕楚呉越秦から成るそれぞれの系統がある。文化的背景も言語も違う。
(これらの特徴について書いてあったサイトがあったがURLを失念した。近いうちに貼ろうと思う。)
漢族のナショナリズムは近い将来、更に分裂したナショナリズムへと発展するだろうというのが私の見通しである。