私は歴史がとても好きで、なかでもとりわけ十字軍とイスラムとモンゴルが大激突する13世紀が大好きなのである。日本では丁度源義経が活躍していた時代である。
先日、キングダムオブへブンという映画を入手する機会があったので、おおこれは見るしかないと思い、見てみた。そこで感想をひとつ。
この映画は予備知識のない人には全くと言っていいほど楽しめないであろう。しかも生半可な予備知識では駄目だ。
アラブ人よりアラブ史に詳しいですよ、くらいでなければ楽しめない。
ストーリーは誰にスポットが当たっているかよくわからず、まるで歴史の教科書を読まされている気分になる。また余計な捏造やラブシーンを増やしたせいで矛盾も多く含んでいる。
つまり単純な娯楽映画としてはクソもいいとこである。
イベリン卿は実際のところほぼ何もしてないので主役としてはふさわしくないし、サラディンに的を絞るならプリンスアルナート・ルノー・ド・シャティヨンとの長い長い因縁をもっと取り上げるべきだし、ボードゥアン4世に焦点を当てるなら彼の呪われた生い立ちから描かなければ駄目だろう。
十字軍がいかにフロンティアドリームかを描くのなら最初のゴッドフリーに怪我をさせずに小アジアまでの道中をメインに持ってくるべきであった。
だがしかし、我々のような歴マニ戦術マニアにとってはそんな人物たちの心理描写などどうでもよく、名場面をいかに描写しているか、また、戦闘の際の陣形展開をいかにして映すか、がキモなのである。この点この映画は100点をあげても良い。
上空からの陣形展開の撮影など、脊髄が痺れそうなカッコよさである。当時のアラブの世界最先端の投石器(確かひとつひとつに悪魔だの大げさな名前がついている)の再現もよかった。攻城戦の雰囲気もばっちりである。
惜しむべきはヒッティーンの会戦の描写がなかったことと、西欧の剣はあんなに刺さらないということ。どちらかというと金属の棒で相手をタコ殴りにして殺すという感じである。またテンプル騎士団など修道院所属の騎士団は確かブレードのある武器の使用を禁じられていたため、メイスやフレイルの装備であったはず。このへんが残念。
最終的な感想
「あ~俺がこの時代にフランス生まれなら絶対十字軍として中東いくわ・・・暗くて臭くて不衛生で文明の遅れた暗黒のヨーロッパなんかには絶対帰りたくねえ。この世の楽園シリアで一生を過ごすね!!」